2021年06月11日
今回はちょっと変わった庭リフォームの現場をご紹介します。

昔に作られた土留めは間知ブロック(けんちぶろっく)を積み上げた、道路脇にあるごくありふれたものでした。
お客様はこの見た目をなんとかしたい。ついでに庭木の整理を行いたい。ただ、残したい木はあるのでそれは残したい。というオーダーを頂きまして、ここ最近当社で扱っている石材をふんだんに使った土留に変更する案をご提案しました。

早速パースを作成し、見積書と一緒にお持ちしたところ一発でご快諾いただきまして、早速仕事に着手することとなりました。

まずは間知ブロックを取り除きます。
実はこのブロック、地味に奥行きのある形状をしていて、ナメてかかるととんでもない失敗をするのですが、今回は重機がしっかり投入できる現場でしたので、ゴリゴリとブロックを取り除いていきました。
一番大きい白っぽい幹の木はモチノキで、この木の根っこの張り方も想像した通り。難しい埋設パイプなんかもなく、とりあえず一安心しました。

石積みのスタートとゴールの角は山石と呼ばれる地元産出の石を使います。石積みに使う石は大きなものはなく、片手で持てるくらいのサイズなので、カチャカチャと積んでいくには良いのですが、一番端の強度に不安が残ります。そこで、端っこだけは山石を使ってみることにしました。
これはこれで味のある庭になりそうで良かったです。

そうしたらドンドン石を積んでいきます。

ドンドンドンドン積んでいきます。

ここまできたら、あとは最後の天端(てんば)を残すのみ。
最後は石の頂上が全部一直線に揃わないといけないので、なかなか時間のかかる作業になります。

そして、天端の石を積み上げたら・・・完成です。
この石の表情、和風にも洋風にも、何にでも合いますね。アーリーアメリカンも演出できるんじゃないでしょうか?
ターシャの庭とかお好きな方は、ぜひお問い合わせください。
楽しいものをお作りできると思います!
2021年06月11日
大物を植えた通り庭、いよいよ仕上げ作業です。

現場から打ち合わせ要請。行ってみると、竹垣根で少しトラブル発生の模様です。
縦に立てる竹(立子たてこ)がコンクリートに乗ってしまうんだけど、しっかり結束するし、このままで大丈夫か?という相談でした。
もちろん答えはノー(笑)
良いわきゃないでしょ・・・
本来であれば杭の位置をバックさせて、このままの状態で竹垣根を作りたいところなんですが・・・実は土の中は様々な構造物のオンパレードでして、配管やコンクリート基礎など、全く杭を動かすことができない状況でした。(まあそれもあって、この状態でいいかという相談だったのですが)

本意ではありませんが、「どちらが良いか?」と言う選択肢を思い浮かべて、横に渡す竹(胴縁どうぶち)を杭の裏側に変更し、杭と胴縁の接点が目立たないよう接点に立子を立て、胴縁を後ろに回したことでできたコンクリートとの隙間に入るギリギリのサイズの竹を入れました。これで違和感は緩和されると思います。
「いやいや、コンクリートに乗せてもよかったんじゃないの?」というご意見もあるかと思いますが、これは感覚の問題ではなく明確な理由があるんですね。

完成後の写真を見ていただければ分かると思います。
竹垣根の根本、立子が土に埋まっている部分には地被植物(リュウノヒゲ)が植えてあるのがお分かりいただけると思います。
コンクリートの冷たい印象から和風の庭へと急に変化するこのエリアは、ガラッと変わってしまうこの境界線のコントラストをどう緩和させるか?がポイントになっています。
そこで、このようにリュウノヒゲという地被植物にしては比較的ボリュームのある植物を植えて緑のベルトを設けることで、コンクリートから和風庭園へ突然変化してしまうのを緩和させているんです。緩衝帯という考え方です。
ここに、剥き出しの竹がコンクリートに乗ってしまっていたら・・・せっかくの緑の緩衝帯も、その効果が半減どころかひょっとしたら効果そのものがなくなってしまうのかもしれません。
仕上げに向かう理想の前提条件が崩れたとしても(この時は地下埋設物の障害でした)今現在の状況で「お施主さまの心の安らぎ」を最大限表現するにはどうしたらいいのか?という事に心を砕いて作庭にあたるのが、施工者の誠意じゃないかなと強く感じています。
とかく、職人は手戻りを嫌うものです。せっかく作った仕事を台無しにされたくはないというのが本音です。
そこで、イヤイヤ待てと、それじゃあダメだと言える設計者がきちんといる事で、なし崩しに庭が作られていって、お客様が「こんなはずじゃ・・・」となってしまうのを防いでいるのです。
2021年05月19日
玄関前付近の庭を今回は報告します。

簡易トイレが据えてあるこのエリアに、敷地の奥へと入っていける通路兼坪庭を作庭していきます。
ポイントになるのは、1年前に苦労して掘り上げた大きなイヌマキです。これを、この庭で使用することが、お施主様の要望になりますので、イヌマキのサイズにしては植え込む庭スペースが狭いのでとても難しいのですが、しっかりと納めて、なおかつ庭として自然な感じに仕上げられればと思います。

まずは職人と構想のすり合わせです。最近ではiPadなど気軽に写真にドローイングできる機械が(機械てw)あるので、私の中にある構想を共有するのがとっても楽になりました。「舩越さんにお任せする」と言われた場合は、共有するための何がしかの絵は書くのですが、緻密な図面も作りませんし、現場の状況でどんどんアレンジしていくのが通常なので、こういう現場での職人とのすり合わせは欠かせません。
さあ、いよいよ大物の植え込み開始です。
元々「門かぶり」という1本の枝が門のように通路にかぶさっている仕立てのイヌマキでしたので、この細い通路でどう使うか、かなり悩みました。何とか枝を活かしたかったのですが、物理的なサイズを無視することは魔法でも使えない限りできません。何とか家の中からは枝振りを鑑賞できる雰囲気に持って行ける場所に据えることができました。
掃き出し窓のような目立つ場所ではありませんが、窓を開けるとイヌマキの枝が見える趣向になっています。
植え込みは、極力高く植えるようにしました。なぜかというと、奥に向かっていく通路のスペースはしっかり確保しなければならず、そのためには枝ぶりが邪魔になるからなんですね。これも限られたスペースで限界ギリギリ、何とか導線を確保することができたかと思います。
奥へと向かっていく飛び石と垣根の配置です。「飛び石」とは、平らな面を持つ石を連続して据え、その上をぴょんぴょん飛ぶように歩いていく日本庭園ではポピュラーな通路になります。
足の地面に接する部分を通行人に選んでもらうのではなく、作庭する側が「ここを踏んで歩いてください」と指定するんですね。なかなかこんな考え方の通路は無いかもしれません。
もっとも、そうやって足を踏みしめる場所を指定するからには、どうやって石を配置するかはとても重要な決定事項になります。広すぎてもダメ、狭すぎてもダメ。人は右足左足と幅がありますので、真っ直ぐ石を配置しても歩きにくい。使う人のシチュエーションも考慮しつつ、配置していきます。この辺、職人の腕の見せ所なんですね。庭を設計した者の意図を汲んで、与えられた材料で最高の仕上げに着地させる。なかなか一朝一夕にできる事ではありません。造園を行う職人としてセンスがあるか?それとも庭造りはちょっと難しいかなと思われてしまうか?庭造りを学びたい若手にとっては、プレッシャーな仕事になるんじゃないかなと思います。
これで色々と難しい場面は乗り越えました。次回は、いよいよこの坪庭の仕上げに入っていきたいと思います。
2021年05月11日
大きな構造物が据え終わったら、地面の植栽や砂利敷きなどを行なっていきます。
玄関側から見ると、この坪庭はかなり低い位置にあるので、玄関に立った時には地面は見えない状態です。
ですので、実際に家に上がって部屋へ通されるその一瞬、お客様が目をやれば庭の地面が見える状態になりますからあまり奇抜にせずあっさりと仕上げようと思いました。


まずは地割り。タマリュウという地被類と砂利敷の境目を描きます。
ここで庭の大部分が決まると言っても過言ではないので、慎重にかつ大胆に?決めていきます。その際、作庭を担当している職人とも話したりします。


次に砂利敷きエリアに雑草を防止する棒草シートを貼っていきます。
特に隅の方は念入りに。裾を立ち上げるくらいの余裕を持たせて施工しています。
目に見えない部分なので、あっさり仕上げようと思えば簡単な話なのでしょうけれど、目に見えない部分だからこそ、何かの拍子にお施主様に見えてしまった時の印象が違うと思うのです。手は抜けません。


タマリュウと白川砂利のコントラストが美しい、とっても分かりやすい和風の坪庭、これにて完成です。
垣根から奥、裏の部分はもう少し手間が加わるので砂利敷きは一旦保留してあります。
立木は元々お施主様のお宅に植えてあったサザンカです。
木に関しては一年前に掘り取って会社の畑に仮植えしてあったものをしっかり使って作庭しました。
玄関をガラリと開けると、手前の大津垣と奥の大和塀が交差するように見え、隣家の駐車場を目隠ししつつ、奥行き感を出します。
玄関を上がってふと坪庭に目を落とすと、砂利とタマリュウの坪庭。
植栽が育ちにくい環境につき、サザンカの育成も少し不安なのですが、そこは毎日の水やりを欠かさず行なっていただくとして、比較的メンテナンスのしやすい庭に仕上げることができました。
住宅の雰囲気とぴったり合わせることができたんじゃないかと思います。
とかくこういうシチュエーションの坪庭は奇抜さを狙ってしまいがちですが、ストレートに表現できたのも、お施主様のご要望を汲みつつ作業できたことが大きいんじゃないかと感じています。
やはり、こういう庭造りは、どこかのハウスメーカーの下請けでは味わえない仕事なのかなと思いますし、20年前に「メーカーの下請けに回って作庭数を伸ばすか?」「作庭数は少ないけれどお施主様直接注文にこだわってきめ細かく作庭するか?」の選択を迫られた時に選んだ道は間違っていなかったのかもなと思います。
もっとも、建築会社様のご紹介で直接庭づくりをさせていただくという機会も結構あるので、もしご覧の建築会社様がいらっしゃれば、ご相談ください。
次は玄関前エリアの作庭に移っていきます。
2021年04月26日
さあ、建築も終了しまして一年越しに造園工事の再開となりました。

土間コンクリートや金物のフェンスなどは建築の方が手配されていまして、今回は当社での出番は無し。もちろん、様々なお付き合いなどありますし、お客さまであるお施主さんが信頼されている方に仕事をおまかせされるのが一番だと私も強く感じています。
もっとも、土間コンクリートや金物フェンスが苦手だからという訳ではなく、むしろ当社では専門職の方と一緒に仕事をしているので、年季の入った仕上がりにする事が可能です。ただ、先程のような理由もありますので、植木や庭石、竹を使った工作物など坪庭スペースのオーダーだけでもご満足頂けるものにするよう心がけています。
今回は、こちらの坪庭スペースです。

玄関を開けると最初に飛び込んでくる、まさにご自宅の顔になるスペース。
どのように表現していくか楽しみな場所でした。
奥行きはあまりなく、しかも隣家の生活感が見えてしまうスペースですので、目隠し効果を狙いながら奥行きのなさを感じさせないレイアウトを考えました。

まずは(玄関側から見て)奥の部分に垣根を建てます。渋いスペースにしたかったのと、行き着くにも狭いスペースを通るのでメンテナンスの頻度を下げたかったこともあり、奥の垣根は板塀としました。

焼いた板と晒し竹という材料を交互にリズムよくつけていく塀で、一般的に大和塀と呼んでいます。

手前側には塩化ビニール製ではありますが、大津垣という竹を編んだような垣根を設置しました。
見た目にもちょっと珍しいので目をひきますから、玄関に入ってきたお客様の視線をまずは坪庭に向かわせる効果を出すことができ、いきなり生活感が視界に飛び込んでこないような仕掛けにしています。

手前にある大津垣と奥に見える大和塀を違い違いに設置することで、感じにくい奥行きを少しでも感じられるようにしました。
からくりは、たがい違いになった垣根と塀の隙間が一定スペース空いたまま視界から消えることで、見たものがその先を想像し、より実際は無いスペースを感じ取ってもらうという仕掛けです。
大きな構造物はここまでになります。
次回はいよいよこの庭の仕上げ作業に入っていきます。